もっと知りたい、愛知のITS(アイティーエス)

背景色 通常 文字サイズ 標準拡大

第77回会員セミナー(ITSあいち県民フォーラム2018)を開催しました

Twitter Facebook LINE

ITSあいち県民フォーラム2018

日時2018年5月31日(木) 14:00~16:00
場所愛知県産業労働センターウインクあいち 1002会議室
名古屋市中村区名駅4丁目4−38
内容

【講演】
◇ITと自動車技術、自動車マーケット -これからのトレンド
  講師:株式会社三菱総合研究所次世代インフラ事業本部
     主席研究員 杉浦 孝明(すぎうら たかあき)氏

◇Mobility as a Service:移動の革新
  講師:特定非営利活動法人ITS Japan
     理事 穐場 亨(あきば とおる)氏

 

 


レポート

愛知県ITS推進協議会は2018年5月31日、『ITSあいち県民フォーラム2018』を名古屋市中村区のウインクあいちにて開催した。会場では「モビリティの技術革新」をテーマにした2つの講演が行われた。

 

 

 

 

 

【講演1】ITと自動車技術、自動車マーケット これからのトレンド
講師:(株)三菱総合研究所次世代インフラ事業本部 スマートインフラグループ グループリーダー 主席研究員 杉浦 孝明(すぎうら たかあき)氏

クルマをはじめ国内消費行動を大規模かつ定量的にリサーチする三菱総研の主席研究員・杉浦氏より、クルマのIT化の進化の先にある自動運転における現状の課題や普及動向予測が紹介された。

現在日本で販売される高級車のジャンルにおいて、既に多くのセンサが標準装備されているほか、高速道路をより安全にリラックスして走行できる「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」の装備も一般的だ。前車との車間距離を保ち、レーンキープ機能を持つACCがさらに進化し、高速道路の分合流に対応できるようになった時、ドライバーは目的のICを設定するだけで高速道路上を自動走行できるようになる。こう考えると自動運転は遠い未来の話ではなく、すぐそこにある未来であることが分かる。杉浦氏は「西暦2025年頃には、高速道路上の約半分のクルマがACC走行になる」と予測する。

だが自動走行の本格的な普及に向けて、解決しなければならない課題も多い。各種センサの技術的・能力的な問題だけでなく、自動運転時のドライバーの注意力低下の問題、事故発生時の刑法・民法上の課題などもある。車載AIは、その動作論理の曖昧さに加え、事故の発生を見通しきれない「予見性の低さ」も課題となる。さらに、AIは膨大な周辺環境の情報を瞬時に処理・判断するため、AIが万一事故を起こした際、その判断が妥当かどうかを検証する際に「Aiの判断を再現できないのでは」といった懸念も挙げられている。

こうした課題を見据えながら、様々な研究開発や法整備作業がまさに今、世界中で進行している。高速道路の走行に限定した場合、2020年という年は自動運転におけるひとつのマイルストーンになるだろう。

 

【講演2】Mobility as a Service:移動の革新
講師:NPO法人ITS Japan 理事 穐場 亨(あきば とおる)氏

ITS Japanの穐場理事による講演では、公共交通やシェアリング等の移動手段を組合せ、個人のニーズにあった移動を提供するサービスである「Mobility as a Service(MaaS)」が主に紹介された。

日本でも少しづつ普及が進むカーシェアリングや、米国Uberなどに代表されるライドシェア、パリのベリブのようなサイクルシェアなど、様々な交通手段・交通事業者をとりまとめ、ユーザーとのインターフェースを一元化することで、ユーザーの利便性を飛躍的に高めているのがMaaSの特徴だ。さらに、ユーザーが支払う交通システムの利用料を「月額定額制」にするなど、使い勝手を強く意識したサービスとすることが、普及への足がかりとなっている点も紹介された。既存の交通事業者にとっても、収益が見込める新しい仕組みが加わるのは魅力的で、北欧のみならず世界各地で同様のサービスが立ち上がってる現状が紹介された。MaaSは今後、さらに多様な地域・多様な利用者へと広げる試みも始まっている。一見すると都市部だけに限定されたサービスと思われがちだが、中山間地域等においてもMaaSの利便性は高い、と穐場理事は語る。曰く、人口が少ない地域では利用者の信頼関係が強く、また最新技術に対する受容性も比較的高い、という特徴があるそうだ。

もちろんMaaSには課題も存在する。交通事業者が細分化されている場合等、すべての事業者のコンセンサスを得ることが難しくなる、といった点や、業界ごとに異なる規格・基準の問題、交通の乗り換えスペースが確保しきれない、といった問題が挙げられている。さらに、商法・商慣習の問題、すなわち「チケット再販問題」と同様の課題も指摘されている。

MaaSは今、大きな期待と課題を両方抱えつつ、試行錯誤を繰り返す黎明期にある。ここ日本においても、今後起こりうる大変革に際して、事業者と行政・自治体が連携し、ともに挑む姿勢が求められるだろう。

文責:株式会社デイズ(ホームページ運営受託事業者)